『ザ・ビートルズ:Get Back』

動画配信サービスのディズニープラスにて、『ザ・ビートルズ:Get Back』を観た。
これはビートルズの、いわゆるゲットバック・セッションの模様を捉えたドキュメンタリー映像作品。
伝説のルーフトップ・コンサートもばっちり収録されている。



当初映画として劇場公開が予定されていた。
監督は、『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン。
しかしコロナ禍の影響を受け劇場での公開から、ディズニー・プラスでの配信となり、また2時間前後だったであろう映画ではなく3部構成で計8時間弱に及ぶ長尺の作品として完成した。
一気に長時間の作品となったことで、いい意味でのダラダラ感があり、それが結果当時のビートルズの様子をしっかりと映し出すこととなった。



僕はローリング・ストーンズの大ファンであるのだが、ビートルズだって大好きである。
一番はストーンズだけど、ストーンズとビートルズはけして対立するものではない。
ビートルズあってのストーンズというのは、まぎれもない事実だし、その後の多くの素晴らしいポップ・ミュージックがビートルズからの影響を受けているのだから。
ビートルズが作った道の上を、ストーンズ他多くのアーティストたちが進んでいったのである。

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 ジョンがストーンズのLP『ベガーズ・バンケット』を手にしているシーン

この作品の中には、ビリー・プレストンやグリン・ジョンズというストーンズとの関係も深い人たちも出てくる。
そして、なによりアラン・クライン。
ストーンズ・ファンの間でも悪名高いこの男アラン・クラインに、ジョン・レノンが夢中になっているのがよく分かる会話シーンもある。
これらのシーン以外では、作品中ほとんどアラン・クラインについては触れられないが、僕はビートルズ解散の諸悪の根源は彼だと思っている。
オノ・ヨーコの存在だという意見も多いけど、そこは乗り越えられたんじゃないだろうか。
確かにリハーサル中ジョンの横にはずっとヨーコがいて、正直なんだかな~という気分にはなった。
しかし、特にメンバー同士の会話に口を挟むでもないので、他のメンバーもやり過ごせる部分があったのでは。
だからこそ逆に”なんでずっといるんだ”と思わなくもないが。
相手のことが好きで好きでたまらなかったのかな、ジョンもヨーコも。

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当初ニューアルバム用の新曲14曲のレコーディングと、久々のライブの模様を収めた映像作品を予定して撮影された。
しかしレコーディングは思うように進まず、ライヴも場所の選定から意見がまとまらず、空気としてはライヴは行わない方向に進んだいくようだった。
加えて途中ジョージ・ハリソンがバンドを脱退すると言い出し、セッションに来なくなる。
確かに、ジョンやポールのジョージに対する、明らかに彼を軽んじた接し方は辞めたくなる気持ちも当然に思えた。

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紆余曲折を経て、ジョージはバンドに戻り、ライヴはアップル・コア社の屋上にて行われることとなった。
いわゆるルーフトップ・コンサートである。
途中警官がやってきて、騒音の苦情から中止を要請する中、計5曲(9テイク)が演奏された。
ビートルズの4人にビリー・プレストンを加えたライヴはとても素晴らしく、この編成でツアーに出て、さらに完成度の高い長時間のパフォーマンスを魅せてくれていたらポップ・ミュージックの歴史がまた違ったものになっただろう。
だがご存知のように、これがビートルズ最後のライヴとなってしまった。
返す返すも残念である。



この翌日残りの曲をスタジオでレコーディングし、セッションは終わる。

全部観て、正直感動した。
そしてビートルズがこの翌年の1970年に実質解散してしまったことは、ポップ・ミュージックの世界においてとても大きな損失だったという事をあらためて、またこれまで以上に強く思った。




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史実にあるようにポール以外の3人がアラン・クラインと契約した。
このことが、解散の大きな要因だったと僕は思っている。
ビジネスマンとしては優秀だったかもしれないアラン・クライン。
しかし彼は、ポップ・ミュージックのさらなる可能性を潰した張本人ではないだろうか。
70年代のビートルズを観たかった。
それでも僕にはリアルタイムではないかもしれないが、アーカイヴとしては体験できたはずだ。
体験したかったな、さらなるビートルズを!!

この記事へのコメント

JT
2022年02月27日 19:50
こんばんは、JTです。

このセッションは当初ゲスト客演がない「Rock'n Roll Circus」を狙ったのかな、と思っています。ライブというより、客の入ったTVショーを企画していたと。監督も同じだし。

さて映画『Let It Be』よりも長尺な分、本作は見どころ沢山ありましたね。

・ジョージとリンゴが見ている前で、「Get Back」を作曲するポール(曲が誕生する瞬間を目撃できた!)
・ビリー・プレストンが最初に合流した「Don't Let Me Down」でいきなり最終テイクと同じオブリガードを弾く所。ジョンもビリーの方をみて「やるじゃん。」みたいな顔していましたね。

>70年代のビートルズを観たかった。

同感です。でも人間関係は『Abbey Road』が限界だったかもしれませんね。アラン・クラインがいなくても。
メンバーの音楽志向の変化も大きかったようですし。
ジョージが言うように、ソロ活動とビートルズ活動が上手くできればよかったのですが。
2022年02月27日 22:19
JTさん

どうも、こんばんは。

>ジョージが言うように、ソロ活動とビートルズ活動が上手くできればよかったのですが。

この頃はバンドを継続しながら、並行してソロ活動をするというのがイメージしにくい時代だったんでしょうか?
しばらくソロ活動を各々がやり、5年後とかくらいにまた集まってやるという方法はあったのに、と思わずにはいられません。
メインヴォーカルが2人というのも、問題を難しくしているのかもという気がしています(しかし、それがビートルズの魅力でもありますが)。
ストーンズもエアロスミスもガンズも仲たがいはしても、結局は戻ってきた。
つまり、ヴォーカリストとギタリストは、お互いを必要としなくてはいけなかったから。
でも、ジョンとポールはそういう感じでもないですしね。
実に残念です。

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