ストーンズ本 『アンダー・ゼア・サム』 ビル・ジャーマン

1978年ハイスクール時代に『ベガーズ・バンケット』というローリング・ストーンズのファンジン(ファンが作る雑誌の意味)第一号を作る。
そして後にそれはストーンズサイドからも認められ、公式のニュースレターとなる。
そんな『ベガーズ・バンケット』の発行・編集人であるビル・ジャーマンが、ストーンズとの交友やストーンズ・ビジネスの裏側などについて書いた著書『アンダー・ゼア・サム』を読んだ。

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ストーンズ関連本はいくつもあるが、それらとの大きな違いは、著者ビル・ジャーマンが生粋のストーンズ・フリークであり、かつこの本の内容がストーンズの内幕を記したというより、彼の青春記という側面が大きいという事。
そこに僕を含め、これを読んだ多くのストーンズ・フリークは強く感じるものがあっただろうと思う。

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ビルがメンバーの中でも特に仲良く接することができたのはロニー・ウッドだった。
そして次にキース。
なのでこの二人との会話などの記述は多い。
逆にミック・ジャガーとは、あまり親密な関係を作ることが出来ず、登場回数は少ない。
それゆえか、ロニーやキースと比べ、ミックはイメージ通りの冷たいビジネスマン的な捉え方で書かれている。
少なくともこの本の中に出てくるストーンズ・メンバーは、僕たちがよく知るそれぞれのイメージととても近いものだ。

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1989年の『スティール・ホイールズ・ツアー』から、ストーンズのコンサート・ビジネスが大きく変換した。
またそれは現在の大物アーティストによるコンサート・ビジネス全体のひな型ともなっている。
その変革の様子が、具体的に描かれているのは、ストーンズ・ファンでなくても興味深い内容だと思う。
ここからツアーを仕切るのは、これまでのビリー・グレアムからマイケル・コールへと変わった。
彼は莫大な金額を提示し、ツアーの権利を手に入れ、あらゆるものに値段を付けた。
関係者のチケットもそうである。
例えメンバーの妻でも、チケットはお金を払って購入しなければならないのである。
このツアーでは、一切ただ券は存在しないのであった。

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その後の初来日公演についての記述も、ドラッグ事情などはとても興味深かった。
70年代と変わらず、少なくともまだこの頃はストーンズの周りにドラッグは付きものだったのだ。

またミックのステージのMCには、ライターが付いているというのもなんか凄い話だなぁと思った。
そして、歌詞が記されていると思っていたプロンプターにはMCの内容や、ステージ上での動きの指示などが出されてるとの事。
実にシステマティックである。

これまで語られてこなかった内部の情報を知れたのは、とても面白かった。
また同じローリング・ストーンズの熱狂的なファンとして、著者のビル・ジャーマンにシンパシーと敬愛の念を抱かずにはいられない。
ストーンズ・ファンには、ぜひ読んでもらいたい一冊!

この日本語訳版は池田裕司氏が監修している。
彼は日本のローリング・ストーンズ・ファンクラブの会長で、『STONE PEOPLE』という会報を発行していた。
若い頃は僕も会員であった。
その冊子の中にあった、ブートレッグ・レビューのコーナーは、今のようにインターネットで簡単に情報が手に入るような時代ではなかった当時、とても有益なブートレッグ情報源だった。
そこで紹介されていた素晴らしきブートレッグを実際に手に入れるのはかなり難しかったけど(良質のものはすぐに完売してしまう)、読んでるだけでも楽しかったな。


『アンダー・ゼア・サム』ビル・ジャーマン著 (amazon)

この本を通して、ビル・ジャーマンは、常に自分はただの(熱狂的な)ローリング・ストーンズのファンである、という自らのアイデンティティを確認しながら、メンバーと交流しファンジンを発行し続けたことが分かる。
時にはそれが葛藤の原因となり、彼自身を苦しめることにもなった。
同じく熱狂的なローリング・ストーンズのファンである僕は、境遇は全然違うがその気持ちは容易に想像できる。
ローリング・ストーンズという存在は、僕の人生に大きな喜びを与え続けてくれてるが、とても厄介な存在でもあるのだ。

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この記事へのコメント

るーさ
2021年10月17日 11:38
ストーンズのブートって正規ライブ作品と違って生生しい感じがよかったですね。正規版は「作品としてのライブ」としてかっちり作ってくるんだけど。
個人的に影響をうけたのは 毎日のライブで同じ曲をやるんだけど常に微妙に変化進化させるんだみたいな態度かな
だから 激しく演奏し過ぎたり失敗もある それが正規とブートで確認できるんだよね
2021年10月17日 12:40
るーささん

そうですよね、ストーンズの正規のライヴ盤は編集されているので、真のライヴ盤とは随分違いますもんね。
何百回と弾いてるフレーズを平気で大間違いするキースに笑ってしまう時もあります。
ストーンズのライヴは日によって、凄く大きな幅が良くも悪くもありますね。
でもハマった時のストーンズのライヴのグルーヴは本当に最高だと思います。

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