プリンス 『Welcome 2 America』

プリンスの新作が発売された。
これは2010年にレコーディングされた完成済の作品で、ボツ曲を集めた未収録曲集というテイストの類ではない。
だが、プリンスはこれをリリースしなかった。
それがどういう理由かは、今となっては分からない。
そして今、本人不在でリリースされることってどうなんだろうか?
というちょっとしたモヤモヤがある。



『ウェルカム・2・アメリカ』と題されたこのアルバムは、プリンスのアメリカに対する当時の気持ちを強く打ち出した作品のようだ。
オバマ大統領が誕生して1年以上が過ぎて作られたこの作品、色んな想いがプリンスの中にあったことは予想できる。
それが2021年の今リリースされたことで、結果としてはよりタイムリーというか、時代に即した作品になってしまっている。
なんだかな~
という気持ちにさせられる。
少なくとも、プリンスが2010年に問題だと感じたことは、今も変わらず問題として残っているということ。
そしてそれは、より巨大化しているという現実。



1曲目のアルバム・タイトル曲は、皮肉たっぷりに”Welcome to America”と歌う。
「Welocme・2・America」の歌詞の意訳(ソニーミュージックの公式サイト)



そしてアルバムラストの 「One Day We Will All B Free」では、ポップ・フィーリングに乗せて軽やかに歌う、さわやかに風を切るように。

その日が来たら 僕たち全員自由になれる
その日 輝かしい日に僕たちはみんな自由になれる
君の話だよ
僕の話でもあるけど




とてもポップで聴きやすく、プリンスならではのハイクオリティなアルバム。
メロディやサウンドなど音的には、彼が得意とするポップ路線が主になっている。
こうして聴くと、オリジナル・アルバムとして最後にリリースされた2015年の『HITnRUN Phase Two 』と同じ流れにあるように聴こえる。
レコーディングされた時期は、繋がっていないので単なる偶然なんだろうけど、この不思議。


プリンス『Welcome 2 America』(amazon)


このアルバムにベーシストとして参加しているのは、タル・ウィルケンフェルド。
当時ジェフ・ベックのツアーに参加していたことから、音楽ファンから大きな注目を集めていた。
プリンスの作品にも参加していたのか。
ぜひライヴにも参加してもらいたかったなー



最初に書いたように、プリンス本人がリリースを取りやめた作品を死後リリースするという事には複雑な気持ちである。
そしてリリースされた作品が素晴らしいとなおさらである。
聴けて良かったし、今後もこのような作品があるなら聴きたいというのが僕の正直の気持ち。
だが、かなりのジレンマです。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック